医薬品・ヘルスケア企業と患者団体(患者会・家族会)をつなぐ
人々は、医薬品・ヘルスケア企業の情報発信よりも患者団体(患者会・家族会)とのつながりを求めている
人が疾患・障がいを背負うとき、どのような情報源からどのような内容を受け取ろうとしているのか。そして、そのとき医薬品・ヘルスケア企業は何ができるのか。という問いに、今回はこたえたいと思います。
医療情報の情報源として、インターネットが果たしている役割と社会的意義
【出典:がん対策に関する世論調査 -内閣府】
このグラフの世論調査の対象疾患はがんという病気に限ったことではありますが、2人に1人がなるとされる病気についての認識・理解は、おおよそ国民全体の傾向を反映したものであると考えて差し支えないでしょう。
そこで、疾患についての情報源として選ばれるものの第一位は医療機関の医療従事者・相談窓口、第二位はインターネット、そして第三位に家族・友人・知人と続きます。
さらに我が国の人々は一般の方の 51.6%がインターネットを情報源としており、さらにインターネット検索では検索結果の上位から順に見ていく方が多数であるというデータが知られています。
このなかの「インターネット」について、少し深く見ていきましょう。果たして医薬品・ヘルスケア企業の情報発信は、どの程度見られているのでしょうか。
これは、「小児がん」という検索キーワードを入力したときに、どのような情報をユーザーが求めているのかをGoogleキーワードプランナーで調査したグラフになります。「原因」「治療」といった内容にもさることながら、「ブログ」「アメブロ」「闘病記」といったワードが頻出していることが分かります。
小児がんは、小児期、すなわち15歳以下の子どもに発生する悪性腫瘍と定義されます。
国際小児がん分類によると、主分類で12種類、小分類で47種類に分類される雑多な癌種で、約3分の1が白血病、残りが固形がんといわれる 固まりを形成する「がん」です。
小児固形がんの半分近くが脳腫瘍で、脳腫瘍の中でも様々な種類のものがありますが、成人の脳腫瘍とは違う種類のものも多くあります。 また、小児固形がんの残りの半分にも実にさまざまな種類の腫瘍が含まれています。小児固形がんでは、成人に多い上皮性の「癌」は少なく、ほとんどが「肉腫」です。 胃癌や肺癌は、それぞれ胃と肺にしか発生しませんが、肉腫の発生母地となる組織は体中至る所に存在するために、小児の固形がんは体中の どこからでも発生するのが特徴です。そのため、発生臓器別ではなく、病理組織学的に名付けられています。
【出典:小児がん | 国立成育医療研究センター】
患者は、医薬品・ヘルスケア企業からのサービスよりも患者(あるいは患者経験者)・患者団体(患者会・家族会)からのサービスを好むことが分かります。見方を変えれば、医薬品・ヘルスケア企業の情報・サービスに〝直接〟つながろうとする動機づけはこのデータからは明らかではないことが分かります。
これらを踏まえると、医薬品・ヘルスケア企業の患者への理解を深め、影響力のある組織と連携することで患者との関わりを高める機会とその伸びしろがあると考えられます。
医薬品・ヘルスケア企業の患者団体(患者会・家族会)とのコラボレーションの今後について
患者の37%は、医薬品・ヘルスケア企業は患者団体(患者会・家族会)とのコラボレーションを通じてニーズをよりよく理解し、エンゲージメントにつながると述べています。
患者の84%は、医薬品・ヘルスケア企業は患者団体(患者会・家族会)とより緊密に連携し、以下を考慮したよりまとまりのある患者体験を生み出す必要があると考えています。
まったく新しい患者体験を提供:医薬品・ヘルスケア企業は患者団体(患者会・家族会)と協力して、ケア体験を再考する方法を模索すべきです。
2019年の調査レポートによれば「医薬品・ヘルスケア企業は患者団体(患者会・家族会)と協力すべき」という主張が確認されており、このような方針はおおよその合意を得られるものと考えられます。
ファイザー株式会社 - ヘルスケア関連団体(患者団体、障がい者団体等)への支援
たとえばファイザーでは"ヘルスケア関連団体(患者団体、障がい者団体等)への支援"として、ネットワーキングや情報誌「まねきねこ」の制作・発行といった分野でのCSRに取り組んでいます。中でも、資金調達に関する勉強会・講演を患者団体(患者会・家族会)にとどけることで、より自立的・自律的な運営に貢献していることがうかがえます。
ほとんどの患者団体(患者会・家族会)は当事者を中心に立ち上がり、非営利団体として活動をしています。当事者の声とつながる数少ない機会を提供する貴重な組織であるにも関わらず、資金面・人材面で課題を抱える団体は少なくありません。
今や、医療・疾患について大きな情報源として機能する「インターネット」。その機能を最大限活用することに共に取り組むことで、企業としても患者団体(患者会・家族会)としても、新たなケアとつながりを見出すきっかけがあるのかもしれません。
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